福島フリースクールネットワーク

福島県内の不登校児童・生徒のフリースクール出席扱いに関する調査結果の報告

【全文】

2022年10月28日

関係各位

ふくしまフリースクールネットワーク
代表 中鉢 博之

 

 「​​​​福島県内の不登校児童・生徒のフリースクール出席扱いに関する調査結果の報告」

 

◇2021年(令和3年)度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」結果の公表(2022年10月27日)

 

全国的に小中学校の不登校(30日以上の欠席)25%増の不登校約244,940人 前年196,127人。24.9%の増加

 

福島県は2021年度は2,918人、2020年は2,393人である。22%の増加

・ふくしまフリースクールネットワーク調査と結果から

【調査概要】

 調査名 :福島県内のフリースクールおよび各教育委員会等との連携実態調査

 実施主体:ふくしまフリースクールネットワーク

 調査期間:2022年10月4日〜10月18日

 

調査結果と考察

 

 県内フリースクールの受け入れ可能人数と、そこに通っている児童生徒の実数

 

   県内フリースクール8団体 定員    150名  
   県内フリースクール8団体 利用実数 97名  

 

県内のフリースクールの数は、徐々に増えている。学校外での居場所や教育機会の提供について、一定の役割を果たしている。一方、その受け入れ可能人数は、全体で150名と不登校児童生徒の実数との開きがある。また設置されている地域も限定的で全県下の不登校児童生徒への機会提供としては充分ではない。 

 

 

 【調査概要】

 調査名 :福島県内の不登校児童・生徒のフリースクール出席扱いに関する調査

 実施主体:ふくしまフリースクールネットワーク

 調査期間:2022年9月4日~9月20日

 調査方法:市町村教育委員会への調査票の郵送による調査

 回答数 :全59の中で、回答があったのは32市町村

 調査協力:NPO法人こおりやま子ども若者ネットワーク

 

調査結果と考察

 

 調査結果① 

 教育支援センター(適応指導教室)の設置状況について

   教育センター(適応指導教室)について設置している自治体 14  
   教育センター(適応指導教室)について設置していない自治体 18

一箇所あたり平均30名の不登校児童生徒が登録していると仮定しても、420人あまりしか学習の機会を得ることができていない。

教育センター(適応指導教室:教育委員会設置、不登校児童生徒のための学習の場)の非設置自治体は町村部に多い。ふくしまフリースクールネットワークが把握しているフリースクールも、市部を中心にある。

福島市、伊達市、白河市、二本松市、郡山市、会津若松市、いわき市、塙町

行政が設置する教育センターは、設置自治体の児童生徒しか通えないために、町村部の不登校児童生徒たちの学習の木柿を得ることが難しい。民間のフリースクールは、広域で児童生徒を受け入れている。ただし、有料であるために(全国平均33,000円であるために、通所できにくい児童生徒も存在する。)尚、当該児童生徒がフリースクールを名乗らない学習塾等に通っているケースもあるので詳細な調査が今後必要となる。いずれにせよ不登校児童生徒が安心して学べる学習機会や居場所の設置について、公民連携しながら進めてゆく必要がある。

 

調査結果②

フリースクールもしくは不登校支援の活動への出席を指導要録上の出席としているか否か?

   認めている 21
   認めていない 1   
   校長判断によって異なる 2
   その他 8(フリスクールが無い。当該児童生徒がいない。他)

多くの自治体でフリースクールへの参加を在籍校の出席と認めている一方、認めていない自治体や校長判断によって異なるとの回答も少数ながらあった。出席を認めている自治体では、校長判断とはいいながら、一定基準を満たせば出席扱いにするというガイドラインを設けている自治体(会津若松市、郡山市等)もある。教育機会の確保法(2016年成立)によれば、学校外での不登校児童生徒の学びの支援を行うことが明記されている。出席認定の基準などについて、今後議論を深め、一人でも多くの子どもの学習機会を提供してゆく必要がある。

 

 

調査結果③

「義務教育の段階における普通教育に相当する教育機会の確保等に関する法律」通称:教育機会の確保法(2016年成立)について、基礎自治体の認知の状況


   知っている 22
   知らない 2
   名前だけ知っている。中身は十分に知らない 4

教育機会確保法について、多くの自治体がその存在を知っていると回答した一方、2つの自治体が知らない。また4つの自治体が中身を充分に知らないと回答している。法律の存在やその中身についての理解は、教育行政ならびに社会全体の理解の必要がある事は言うまでもない。上記法律を反映させた文科省通達についても、学校現場の教員の話からは、その存在を知らないとのことを耳にすることは少なくない。社会的な要請から出来た法律の存在やその中身について立場を超えて理解の機会をつくることが急務であると考えられる。

 

 

◇ふくしまフリースクールネットワークとしての意見

1、県内2,918人いる不登校児童生徒の中で、フリースクール、教育センターの受け入れ人数の合計は570人余り。県内不登校実数の20%あまりにしか、相談や学習機会が提供できていない。全国的に見ても34%はどこにも相談できてはいない。この事実は、学習機会を提供する公民連携しながら、増え続ける、不登校児童・生徒への相談や学習の場を増やしてゆき、不登校ではあっても学びを必要としている児童・生徒への学習権を保障する必要がある。


2、本調査結果および日々の当該児童生徒への関りから、次の取組等の必要性を認識している。まずは「義務教育の段階における普通教育に相当する教育機会の確保等に関する法律」通称:教育機会の確保法(以下、確保法)の存在の認知や、その中身の理解を社会的に深めていく必要がある。学校だけが学びの場となることの苦しさから、解放される必要がある。本人の意思や状況にあわせて、学校外で学ぶことが認められる社会になるために、同法の理解を深めていき、行政と連携した相談事業等を行う必要がある。

 

3、「不登校児童生徒への支援の在り方について」(通知)(平成28年)では不登校は「問題行動」と判断してはならない。と記されている。学校外の教育現場において目にするのは、学校もしくは家庭や地域から当該生徒の不登校が問題行動とされ、学校に戻る、戻すという結論を持って対応されるので、本人が精神的に追い詰められる状況も少なくない。法律の理解と共に不登校についての理解について、その考えや認識を教育行政と連携して広め、学びの場づくりのために協働での事業を行ってゆきたい。

 

4、不登校、児童生徒が、学校にゆけなくなった時の、休む権利を教育機会確保法の中に定められている。どの子学校で学びたいという気持ちを持ちながらも、学校に行けないという苦しさを抱えている。

10代の死因のトップが自殺であるように、まだまだ子どもたちの命が十分に守られる状況にはなっていない。学校にゆけなくとも、安心、安全の中で育ち成長できるという子どもにとっての固有の権利を学校、フリースクールだけではなく、大人たちはしっかり保障してゆく必要がある。

 

 

 

5、コロナ禍の影響と不登校との関係性

NPO法人フリースクール全国ネットワーク相談事業(2020年11月〜2021年12月)

相談件数465件から言える事は、不登校になる子どもたちは、コロナの影響だけではなく多様な課題や困難を持っているということである。

 私たちは、学校や教育委員会、フリースクール関係者だけで増え続ける不登校児童生徒の課題に寄り添う事はできない。多様な主体と連携し、社会的な課題として共に子どもたちの学びと育ちを支えてゆく事を、社会全体に呼びかけてゆきたい。

 

 ◇ふくしまフリースクールネットワーク構成団体 

(*団体により、フリスクール名と団体名記載がある。) 

・大町キッズベース 

・星槎フリースクール郡山 

・NPO法人寺子屋方丈舎 

・NPO法人明日飛子ども自立の里 

・NPO法人ビーンズふくしま 

・東白川子どもの居場所 

・NPO法人あだたら青い空 

・NPO法人みんなの広場 

 

◇調査協力団体 

・NPO法人こおりやま子ども若者ネットワーク 

 

 

 

 

■      問い合わせ先 

ふくしまフリースクールネットワーク(江川和弥)
 メールアドレス:[email protected] 

電話番号:090-3755-6794